すくすく子育て子ども達
月刊プラザ
 2007年 5月号
『小児の大腸と肛門の疾患』

子どもの大腸肛門疾患なんて聞きなれない病気です。時に子どもが便秘していたり、排便の後にお尻を痛がったり、そんな悩みについて相談してみました。

 小児の大腸肛門疾患は、われわれの日常診療で比較的多く遭遇します。通常、おう吐、下痢、腹痛などは小児科に受診します。大腸肛門科に受診する場合には、下血、重症な便秘、肛門部痛などの症状で受診することが多いものです。従って、今回は、大腸肛門科に受診する小児の比較的良く認められる疾患について簡単に紹介していきたいと思います。

 1.下血を訴えてくる場合。
  最も多い疾患は、裂肛(きれぢ)で、ほかに大腸ポリープ(若年性ポリープ)、まれに腸重積、メッ
  ケル憩室、血管性紫斑病、潰瘍性大腸炎などがあり、成人に多い内痔核(いぼぢ)は、ほとんどあり
  ません。

 (1)裂肛
   硬くて太い便を排泄する時に発生する肛門の上皮の裂創(さけきず)で、2〜3週間以上に及ぶと肛
  門縁に皮膚のたるみを形成することがあります。
   裂肛の治療は、硬便→裂肛→排便に対する恐怖→便秘→硬便の悪循環を断ち切ることにあります。
  治療としては、軟膏を投与することと、大切なのが排便管理です。便の性状を整えるだけで裂肛が治
  癒することがあります。下剤の投与は慎重でなければならなく、時には、かえって裂肛を悪化させる
  ことがあります。便性のコントロールは、下剤以上に食事による調整が大切でこれはあとに便秘の項
  目で述べることにします。
   思春期以前の患児に手術的治療は、必要ありません。保存的治療ですべて治癒します。繰り返しの
  裂肛もすべて保存的治療で十分です。また、裂肛に伴う皮膚のたるみは裂肛の治癒後数ヶ月で目立た
  なくなることが多く切除する必要はありません。

 (2)若年性ポリープ
   若年性ポリープはがん化の可能性を持つ腺腫性ポリープとは全く異なる良性腫瘍です。大きくなる
  と出血しやすいのが特徴です。したがって主症状は、下血で、裂肛とまちがえる場合があります。便
  に鮮血が付着する程度の出血量ですが下着が汚れるような場合もあります。肛門近くの直腸下部に存
  在する場合、ポリープが肛門より脱出することもあります。治療は全身麻酔とともに大腸ファイバー
  スコピーによるポリープ切除を行います。また、ポリープが悪化することはないので予後は良好で、
  無症状の場合は放置しても良いとされています。

 2.便秘を主訴とする場合。
  多くは、慢性便秘で、まれにヒルシュスプルング病があります。

 (1)慢性便秘
   直腸肛門部にあきらかなほかの疾患がないのに便秘をきたす場合をいいます。原因の多くは体質
  や、トイレトレーニングがうまくいかなかったことからくる機能的な便秘です。発症は幼児期以降
  で、保育園や幼稚園に通いだして発症する場合もあります。直腸内に蓄積した硬便が排便困難を助長
  し、下着の汚れを認めることもあります。
   詳細な既往歴、現病歴と診断所見から何ら原因疾患が疑われない場合、慢性便秘と考え、特異的な
  検査を受けることはほとんどありません。腹部膨満や嘔吐を生じる例では、ヒルシュスプルング病と
  の鑑別が必要で、この場合、注腸造影検査や直腸肛門内圧検査が必要である場合があります。
   便秘の治療には、行動、精神、薬物療法を含めた保存的治療を行います。これには親の正しい理解
  と協力が不可欠です。まず、硬便を軟らかくする果物、ヨーグルト、成長期でもありますので豆類
 (納豆、おから)やイモ類等のカロリーがある食事を勧めて食餌療法を行います。さらに緩下剤を処方
  し、排便が容易となるよう便性を調整します。排便を習慣づけることが大切なので、毎日一定の決
  まった時間(食後)に投薬し、決まった時間に排便を試みさせ、便意や排便感を学習させることが大
  切です。数ヶ月単位で排便状態を評価しながら投薬量を漸滅していきます。
   浣腸を繰り返すことは、逆に小児の排便に対する恐怖心を助長させていることがありますので、容
  易な浣腸の使用は避けなければなりません。

 3.肛門痛を訴えてくる場合。
  子供でも痔疾患はあります。しかし、痔核(いぼぢ)はほとんどみられません。さきに述べた裂肛が
 最も多く、次に多いのが肛門周囲膿瘍、痔瘻です。

 (1)痔瘻
   痔瘻の大部分は肛門周囲膿瘍の後に発症します。通常1歳以下の乳児で、男児がほとんどです。理由
  はまだわかっておりません。成人の痔瘻から比べると浅く、瘻管は単純です。診断は、経験ある医者
  にとっては簡単です。女児の場合と、クローン病という難病に伴う場合以外、特別な検査は必要あり
  ません。
   小児の痔瘻は、成人例と異なり自然治癒の傾向がありますので、原則的には保存療法を行います。
  肛囲の清潔に心がけ、排便・排尿後に局所の洗浄を行います。症状が反復する例では、全身麻酔で手
  術療法を行います。術後の痛みはほとんどなく、安全な手術ですので、手術がかわいそうというより
  もむしろ、膿が出たままの状態の方がかわいそうなので反復する場合、手術に躊躇はありません。


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