早期がんに対して行われている内視鏡治療は、開腹手術に比べて入院日数が短期間ですみ、また患者さんへの負担も軽くできるため、従来の外科治療に代わる新しい治療法です。
内視鏡を使った治療法には、スネアと呼ばれる金属の輪を病変部に直接引っ掛け、高周波電流を流して切り取る方法(内視鏡的粘膜切除術;Endoscopic mucosal resection:EMR)があります。
最近では、図のような専用の処置具を使ってより大きな病変を切り取る方法も行われるようになってきています。これは内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)と呼ばれています。
ESDは専用の処置具を使い、より広範囲に病変を切り取ることが可能な治療法です。
切り取られた病変は、最終的に顕微鏡でその組織の様子が確認されます(病理検査)。
このように、ESDでは大きな病変もひとかたまりで取れ、また病理検査でのより正確な診断にも役立つと考えられています。
ESD治療に用いられる器具
ESDの手技
1
マーキング(印)をつけます。
2
病変を浮かせます。
3
周囲に切り込みを入れます。
4
病変の裏側を剥がします。
5
病変を回収して検査に出します。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)対象の病変
腫瘍の大きさ、組織型(分化型、未分化型)、深さ、潰瘍合併の有無により規定されます。
絶対適応病変は、「がんの深さが粘膜層に留まり、腫瘍経2cm以下、潰瘍を伴わない分化型がん」とされています。ただし、適応拡大病変として次の状態のものがあります。
①2cmを超えるが、潰瘍を伴わず深さが粘膜層に留まる分化型がん
②3cm以下の潰瘍を伴う、深さが粘膜層までの分化がん
③2cm以下の潰瘍を伴わない深さが粘膜層までの未分化がん
絶対適応病変と、適応拡大病変以外はESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の適応外病変となります。